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蜘蛛メモ4
先代女王の墓から持ち出された『何か』
世界結界という白い糸に包まれた葛緒古流。
屋敷から出される多くの生ゴミ。
屋敷の敷地内に広がる竹林に張り巡らされた蜘蛛の巣。

さて、答えあわせの時間である。

遺跡に眠っていたのは先代の女王だった。
そしてその胸に抱いていたのがメガリス――瑠璃硝子の蜘蛛。
巫女、とは。
嘗ての旧世界においてゴーストの一派土蜘蛛一族に使える能力者の家系に生まれ、世界結界にも惑わされずに連綿とその事実を口伝と伝えて来た『人間』の一族に連なる者だったのだ。
ゴースト側の人間が居る――。
…これについては別段驚くべきことではない。
言うなれば、逆に考えてみれば良いのだ。

そう、もともと土蜘蛛一族とは、朝廷に従わなかったまつろわぬ民の名でもある。
現世の力――人が文明を発達させると共に育って来た常識、という力と相対する物、それは他ならぬ『能力者』の力に他ならない。
強大な異形の力を備えた能力者とその一族が、時の権力者から危険視され、蔑視され、悪として排斥されようとする。
…何時の世にも、良くある話だ。
何せ彼らは能力者、現世の表を司る人側の権力とは相容れない行動を取らざるおえない場合も多々あり、またその理由を説明することも出来ない、したところで表の人間には理解も出来ぬし、ましてその頃から常識の力を利用しての世界結界での護りという理論が出来かかっていたとすれば、その力を弱めるような発言、行動を何故彼らが取れようものか。
そうした彼らと、現に生きる人間は悲しいかな本当に、理解しえることはないのだ。
そしてその力が、本来ならば世界を、人を守るべきものであると気付けず間違いを犯す人間は、何時の世にもいるだろう。
いや――実際に、居る。

…そして女王と呼ばれた能力者が殺される。

護るべき、人間達の手で。

そうして女王は蘇る。
怨嗟の声を高らかに挙げるゴーストとして。
女王を殺され、それによって人間を敵と見なすようになった己が能力者の一族と共に今度は異界よりの勢力、ゴースト側としての強大な力となって。

こうして、ゴーストの一派、土蜘蛛一族は生まれいずる。
この世界の敵、真の悪として、生まれ変わる。
本当に…良くある話だ。

話がずれたが…ようするに、ゴースト側の人間がいたのではなく、もともと人間だった集団の中でゴースト化した者が出たので皆でゴースト側に移りました。
こう考えてみれば至極納得行こうというもの、無論経緯についてはいわゆる妄想オツであるので気にしないように。

古くよりこの世界の闇の部分に近いところで生きて来た我が家に伝わる古文書にはこのような話は幾らでも載っている――うむ、多分な。

で、駄文はさておいて答え合わせ。
報告書にあった女王の言葉をいくつか引用してみるとする。

「……折角だ、お前の問いに答えてやろう。私は、土蜘蛛を統べる者として君臨する為に生まれいずる存在。遠き日にこの建物の地下に遺され、つい先刻長き眠りより目覚めたのだ」

つまり旧校舎に現れた少女のゴーストとは、世界結界創造以前の世よりいずれ再び土蜘蛛一族がそのメガリスの力を以ってこの世に君臨するための、布石。
遠い過去に残された女王の影、または純粋に生まれ変わりと言っても良いかもしれない。

そしてこの学園は過去の女王が己の力の分身とでもいうべき存在を、眠りにつかせた場所であったというわけだ。

『そして、かつてと同じ言葉を掛けよう。土蜘蛛の結界を侵さざれば生を、土蜘蛛の結界を侵すならば死を与えると』

嘗て。
今や正確に知るのは女王とその一族しかいない遠い遠い過去、確実にこの地にあった人と異形のモノの戦。

不可侵条約はしかし実際のところ、じわじわと真綿で首を絞めるように、現世の拠り所である世界結界の崩壊という結末へと導く選択に他ならぬ。

引く、という選択肢は、事実上存在しないのだ。


この学園からの通達を受けた晩、祖父へ電話をかけた。

「『その時』が、始まりました」

そう、告げるために。
by ryu-itirou | 2007-03-24 00:19 | 雑記