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狂鬼戦争

















 だが実は、狂鬼とは一つのもののことではない。

 狂ったのは人。

 猛るのは鬼。

 「世界をあるべき元の姿に」との妄執は常識を穿ち。

 ささやかな人の営みを微塵に打ち砕く。

 あるべき世界とはなんぞや。

 人が皆、力を以って戦っていた嘗ての世界か。

 確かにそれはある意味理想。

 皆が皆、平等に。

 傷つき、戦い、死に、異界からの銀の雨を祓うべく生きる世界。

 だがかつての人は選択した。

 皆が皆、そうして生きずとも良いと。

 ――少なくとも、我々の祖先達はそう思い、そう決断して。

 力という剣を捨てて、世界結界という盾を手にした。

 ならば、今更それを蒸し返して何になるのか。

 盛者必衰の理あり。

 形あるものは必ず壊れる、その通り、何時か必ず再び世界は変容しよう。

 それが嘗てのこの世界の姿に近いものになるのか。

 はたまた、昔とも今とも違う、全く別の姿になるか。

 それは神ならぬ人の身には到底至るものではないが。

 それはそれだ、自然な流れである。

 だが今ここで。 

 無理やりに捻じ曲げてそうなるよう仕向け。

 再び世界を混乱に落としいれるのは果たして正義か?

 せん無きことだ。

 良いも悪いも、正義も悪も、それ全ては立場で、考えで個々に違うもの。

 語るべくもない…何故なら。

 彼らはすでに、力を行使して行動を開始しているのだから。

 ならば我々は我々なりの正義を貫くしかないだろう。

 刃はただ、断ち切るために存在するもの。

 振るわれるべくして力となり、眼前のモノを切り払うためだけのもの。

 ただ愚かに、学園が掲げる正義を、世界結界と人間の守護を信じて。

 …賢者ならぬその瞳には、先など見えなくとも。
by ryu-itirou | 2008-03-25 01:09 | 雑記