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驟雨




 さて。
 …いよいよキナ臭くなって来た。

 毒島らが向かった天輪宗への潜入依頼、その報告書が学園に齎された。
 結果から言うと、最悪である。

 この依頼が出された時、運命予報士である扇が言っていた中に、気になる発言があったらしきことを、俺は覚えていた。

 曰く。

『あれだけの数の妖獣を封じたとなるとメガリスの効果かもしれない』

『(鋏角衆が)石を見張るような素振りをしていたようだから』

『瑞貴達から何らか接触はあった』

 あの日、あの放課後の教室と運命の糸が結ばれた能力者生徒達の口から伝え聞いて、俺はそんなバカなと思ったものである。
 天輪宗がメガリスを持っているかもしれない、というのは兎も角…正直、この依頼が出された時点で、土蜘蛛と天輪宗が手を組んでいるように見える情報が、他の依頼結果に現れていたとは思えなかったからだ。

 であるから――はて、これは俺の考えすぎか?鋏角衆が石を見張るというのは、石を奪うがために様子を伺っていたということか、瑞貴達からの接触というのは天輪宗下位の見張り役へ瑞貴配下の土蜘蛛一族が接触を持った、ということか、と、そう俺が考えてしまったのも仕方あるまい。
 今となっては過去の依頼を総ざらいしてその情報が果たして出ていたものかと考える間も惜しい。

 上記の依頼結果に『天輪宗本部の中に、土蜘蛛一族が存在する』ことは、依頼参加者の手によって、すでに確定事項となったからだ。
 そしてあわせて…教団のTOPは大体が高年齢の能力者であり、ほぼ間違いなく静かなる狂気に犯されているだろうことも。

 さて上でも述べたが…これは最悪である。
 能力と組織、さらにメガリスという強大な力を有しながらも(あえて所有していると断定する)、狂気に犯され、正気ではない天輪宗という存在を。

 同じく狂気に犯され、それら力を躊躇い無く振るえる巨大なエゴと組織力、天輪の老人達にはない、世界の正しい知識を持つ瑞貴が。

 …利用し、取り込み。
 まさに蜘蛛の糸にて絡め取り、操っている可能性が非常に高くなるからである。
 長くかの石を守ってきた団結力に裏打ちされた能力者集団としての実力に加え、メガリスまで有するとなれば瑞貴が接触し、利用してやろうと考えるに充分。
 しかし、うむ、このカップリングはとても拙い、やはり瑞貴は老人ではなく帯刀と――いや、そうでなくて。

 …いよいよ天輪宗+東北土蜘蛛一族+リリスVS銀誓館学園の戦争が勃発するかもしれない危険性が高くなって来たということである。

 以前は、天輪宗と瑞貴率いる土蜘蛛一族、その瑞貴を追う土蜘蛛の巫女一派と銀誓館学園という四つ巴の争いになるやも、と危惧していたわけだが――こと、此処に至って天輪宗と東北土蜘蛛一族(瑞貴派&巫女一派)は完全に結託したといって良いだろう。
 これで前回の記事にも書いた、あの帯刀を含む巫女の集団が、愛媛東部に現れた土蜘蛛の集団に合流しようという動きを見せたのも納得である、おそらく巫女達は最後には…たとえどのようなモノだろうとも、自分達の王に従うことを選んだのだ。

 もっとも個人的には…あの女王付きの巫女――帯刀の真意は測りかねるところもある。

 あの東北依頼からの逃亡のあと、二人がどんな邂逅を果たし、どんな話をしたのかは知る由もない、知る由も無いが…。
 嘗ての報告書から感じられる奴の責任感を慮るに、一旦は再び従う動きを見せつつもいざ本当に瑞貴が狂気に犯され、もはや取り返しが着かないと感じたら己が命を捨ててでも奴を止めかねない――…そんな気が、してしまうからだ。

 …最近は日本にも、熱帯地方によく見られたスコールが降るようになったなと思う。

 果たしてこの、強風が運んできた雨は。
 通り雨で終わるものか?

 ――それとも。
 …秋の嵐の前触れとなるか――?
by ryu-itirou | 2008-09-07 15:23 | 雑記