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2008年 03月 10日 ( 1 )
それからの僕ら




 大分、間が空いてしまった。

 そういうわけで卒業式も滞りなく終了、俺は銀誓館学園第一期卒業生と相成ったわけである。
 そう、第一期だ。
 気付いて居ない者も実は多いのではなかろうか、銀誓館学園は今年度初めて卒業生を送り出したということを。
 恐らく、学園創立に関わった一世代前の能力者である諸先輩らもほっと胸を撫で下ろしていらっしゃるのではなかろうか?

 さて、そんな昨今であるが近況をぽつぽつと書いていこう。
 まず、今後の俺の進路について。
 待っていたせいか、やけに届くのが遅く感じた合格通知もどうやら手元に無事到着、なんとか合格に漕ぎ着けたようである。
 よって四月からは晴れて大学生、実家の祖父に電話で連絡したところ「でかした!」とお褒めの言葉を頂いた、ついでに自分の車をお下がりにしてやろう!というのでどうせなら新車を買ってくれと言っておいた、この春には一度此方まで出て来るというので、その際にはピカピカの新車に乗って来てくれるのを期待しておこう…いやまあ、実家に戻る時など考えれば祖父の愛車のランクルはそれなりに実用性もあるのだが、どうにも図体がでかいので小回りが効かない、街中を走るにはいかにも不向きなのでそこらへんを少々考えてくれると良いのだが――…ま、考えてもせん無きことととりあえず放置。

 次に、住まいのことである。
 前にも部室では述べたが、今の借家はまだ契約も残っていることだし一先ずそのまま使うことにした。
 もとより、卒業したとは言っても学園所属の能力者としてまだまだ活動することを考えるに、鎌倉に拠点があるに越した事は無い。
 とはいえ、だ。
 都内のキャンパスへ通うことを考えると、もう少し都内よりにも寝泊り出来る場所が欲しい。
 よって周囲へ何かよさげな物件がないかと相談してみたところ――以前、身内のゴタゴタで面倒を見た奴が横浜へ家を持っているとのこと。
 俺より年下であるにも関わらず、すでに手に職を持ち…芸術作品を生み出す、というのも手に職といってしまって構わないよな?…いっぱしの稼ぎを得ているその親類が買ったという物件は話を聞くに、車やバイクなど足があれば都内へ出るにもまるで不都合が無さそうであった。
 よって本人に連絡を取ってみたところ――…二つ返事で部屋の間借りを許して貰った。

 うむ、これで一安心と思ったわけだが…ああ、それなら、と思い立った。
 以前より、折角こちらで集まった親類も多くなってきたところであるので、それら血の繋がりのある面子メインの結社など作ってみたくなったわけである。
 もとより、その身元に不都合などありはしない。
 その館を拠点に下宿のようにワイワイと、皆で共同生活を送れれば、それはそれは心強いのではないか――…何より俺と同じように、鎌倉以外へ生活の場を移す者も居るわけだし。

 …そんなことを考えたわけである。
 そして文字通り、正しい意味での身内結社が誕生の運びと相成った、これからはそちらと鎌倉の家と行ったり来たりの生活になると思われる。

 そんなこんなで。
 卒業式からこっち、せっせと新たな生活用品を買い揃えたり、運んだり、また入学に関しての資料を読み、書類を用意したりという生活に明け暮れていたわけである。
 詳しく言うと…運良く、行き着けのバイク屋で知り合いになった土木建業の社長――白ひげを蓄え、休日にはハーレーを乗り回すナイスミドル(こう書けと言われた)――から2トントラックを借りられたのでそれで新しい家具やら身の回りのものを運んだりしていた。
 まだ学園の授業が残っていて日中動けない歩や沙那の荷物を代わりに動かしたり(とはいえまだ鎌倉メインで動く二人の荷物はさほどでもないが)俺と同じくもう卒業して自由の利く朔、珪らと共に互いの荷物を手分けして購入したり…そんなこんなで日々を過ごしていたのである。
 ちなみに当然ながら社長にはのちにお礼として菓子折りを包んで持っていった、朔と珪を見てほのかに顔を赤らめ、いつもよりぶっきらぼうになった純情中年の社長に乾杯。

 ――穏やかに春の匂いが強まるそんな平和な日々の中、その訃報は突然俺の耳に飛び込んで来た。
 古武道部の部員でもある高木が向かった東北の土蜘蛛一族、その学園で、一人の女子生徒が亡くなったという。
 それを知った時、すまない、俺は正直。
 知っている人間――高木でなくて良かったと思った。
 決して褒められた感情ではないが、正直なところ、誰でもそう思うだろう。
 勿論誰が死ぬのも悲しい。
 学園の仲間なのだから、それは当然だ、だがそれと同じくらいに…知り合いが死ぬのはより、悲しい。
 そんな自分のエゴにため息をつきつつも、同時に俺は思い出す。
 日頃、運命予報士の予知と無理をさせまいという学園の計画に則って能力者活動をしているとつい忘れてしまいそうにすらなるが――俺達は命を張って、戦っているのである。

 それは怪我もすれば死にもする、それは起こって当たり前の話なのだ。
 今はただ、冥福を祈らせて貰うと共に――件の学園に残った者達には、是が非でも、こたびの土蜘蛛とはより良い関係を築いて貰いたいと思う。
 今の俺達は、もうすでに知っている。
 来訪者も、狂気も、世界の秘密をあの頃より余程知りえている。
 馬鹿を見るのは、一度きりで沢山だ、あの悲しい邂逅を繰り返してはならない。
 最後に、無念に散ってしまった彼女の魂が安らかに眠ることを祈る。

 さて…上記の一件には、個人的にちと気になったことがある。
 あの帯刀という側仕えの男子生徒――…ひょっとして彼はなんらかの理由によりあの葛城山の戦争の顛末を知っているのではないだろうか、などと考えた。
 そう考えれば、彼が非友好的であることや、今回の報告書にあった「答えなければ判らないか?」との言葉。
 また、彼が女王と銀誓館の間に接触がもたれることを嫌がる理由が明確になるからである。
 それはそうだろう。
 違う一族とはいえ、同じ土蜘蛛の一族を滅ぼした組織と下手に接触は持ちたくあるまい、まして女王はまだ未熟、今はまだ力を蓄える時だと彼が考えるのも当然だ。
 とはいえこれも俺のごく個人的な思考であるから果たして真足りえるかは判らない。
 今後の成り行きを、しっかと見届けることとする。

 さて次に、鬼関連の話。
 何かいつもの学園の依頼とは、随分毛色の違う任務が出たな、と思った。
 前回、ヘリで逃げおおせた敵の首魁が潜む場所を想定し、巡り、本拠地を探るというその依頼。
 学園には運命予報士が居る。
 あまりにも優れた情報収集能力を持った彼らがいるお陰で、俺達能力者は事前の情報収集は全て彼らに丸投げで任務にのみ、集中することが出来る。
 普段のその形式とはまるで違う、足で探る情報収集。
 こうした慣れていない形での依頼、不慣れな者も多かろう。
 参加出来た者は是非、頑張って貰いたいものである。

 あとは…吸血鬼に関しての話になる。
 恐らくは四月から、あゆみ達が此方へ転校…という具合になるのだろうか?
 同じく吸血鬼側から逃げ出した狂気の吸血鬼、その捕縛を依頼されたようだ――…ちと興味はあるがこの優先度では間違いなく無理。
 この結果如何で、従属種だけでなく貴種ヴァンパイアが学園へ入ることになるかどうか、その成否が問われるような気がするのは気のせいか、というか本当に使えるのか、強いのか、また信頼に足る相手であるのか、相変わらずそれを試されている気がしなくもない。
 だが良いだろう、汝欲せよ、さらば与えられん、相互理解はまずどちらかが引かねばならない、これは先の土蜘蛛依頼でも同じこと、疑いを晴らせるのは誠意ある言葉よりいっそ愚直な行動であったりするかもしれない、五徳の順位は仁が一番、義が二番、三四が礼智で五に信。そう、まずは仁、即ち愛、ラブイズオーヴァー、悲しいけれど、終りにしようキリが無いから。つまりは憎しみの連鎖はどこかで断たねばならない、どこかで誰かが泣いて、それで終りにせねばならない、許すことから全ては始まる。

 うむ、なにか上手い事纏まったような気がする、では今日はこの辺で。
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by ryu-itirou | 2008-03-10 23:27 | 雑記